
文章のマッチ率について
CATツールを使って翻訳を始める前に、文章のマッチ率を算出するケースがあります。
ふだん翻訳を外部委託しているメーカーや翻訳会社に所属している方、また翻訳者の方は「100%」「95-99%」などの数値が書かれた資料を目にしたことがあるのではないでしょうか。
今回は、このうち「100%」という数値についてご説明させていただきます。
100%マッチとは何か?
100%マッチとは、既存の翻訳メモリ(TM)に翻訳対象の原稿と全く同じ分節が登録されているか、もしくは翻訳対象の原稿内で繰り返し同じ分節が登場する箇所を指します。
(CATツールによっては「コンテキスト一致」や「ファイル間の繰り返し」等の項目がありますが、これらのご説明は割愛します)
100%マッチの場合は作業は発生しない?
この100%マッチについて、翻訳のご依頼元の方から「100%一致しているのであれば、なにも作業をしなくて良いのでは?」というご質問をよくいただきます。
たしかに、過去に一度翻訳したのであれば、その箇所は一切見なくてもよいように感じます。
しかし、たとえ解析結果が100%になっていたとしても、翻訳をする際は必ず再度訳文をチェックして、場合によっては再度翻訳し直さなければなりません。
たとえば、翻訳対象の文章内にこのような英文があったとします。
Do not smoke.
この文章を、過去に以下のように訳しました。
タバコを吸わないでください。
この場合、過去に一度翻訳しているため、今回の解析結果は100%マッチとなりました。
しかし、実際の原稿データを見たところ、前回に訳した文章は施設の利用規則の冊子でしたが、今回は施設に掲示するプレートでした。
プレートにこの文字だけ書かれていた場合、「タバコを吸わないでください」という訳文はあまり適切ではありません。
より適切なのは、下記のような訳文です。
禁煙
このように、マッチ率が100%となっている分節でも、文章のジャンルや前後の文脈によって、適切な訳語に直さなくてはならないケースが多くあります。
CATツールを用いた翻訳を会社や個人に依頼する際は、上記のような点に気をつけることで、スムーズに交渉を進められるでしょう。